Weak Point 


弱い、硬い、鈍い、緩い、これらの特徴がある筋


「痛みを起こしている根本の部位」

「パフォーマンスに抑制として働く部位」

「身体の姿勢や動きをくるわせ、他の部位に負担をかけたりする筋肉や、痛み・違和感の部位」


ィークポイントの三大特徴は「タイト・ルーズ・ウィーク」で、「硬いまたは緩い、そして弱い」を意味します。これは、柔軟性と筋力に基づく最大の特徴です。また、筋肉が伸びる、縮む状態を意識できるか、感じることができるかどうかも、ウィークポイントを決める重要な要素となります。


ウィークポイントは、先天的・遺伝的な骨格形状(骨の形、骨盤の形、腰椎の形、骨の配列、骨密度)により容易に変えられないものから、筋バランスの調整で改善できるものが含まれます。骨格形状がウィークポイントの原因となる例として、脚長差(左右脚の長さの差)があげられます。脚長差が1cmでも、当然のごとく骨盤は傾くため、股関節も体幹部も多くの筋肉が左右アンバランスになります。また、関節自体や筋肉が骨に付く場所に左右差を生じさせるので、筋バランスが崩れやすくなります。重篤なほどさまざまな部位に影響を及ぼし、機能障害の原因となります。


 ここで、ィークポイントの三大特徴とそうなる理由について分類してみましょう。

 1.タイト:筋肉が硬く伸びない状態、関節が動きにくい状態、拘縮

   「タイト」になる理由   1 代償性、オーバーユース

                2 狭い関節可動域

                3 筋バランス(筋線維含む)

                4 廃用性萎縮

 2.ルーズ:筋肉や関節が緩み過ぎている状態、弛緩

   「ルーズ」になる理由   1 使わない(廃用性)

                2 広い関節可動域

                3 神経の障害

 3.ウィーク:筋力が弱く、腱や骨に付く場所に負担がかかる状態

   「ウィーク」になる理由 1 使わない(廃用性)

               2 伸ばしすぎ

                        3 痛み(打撲、火傷、擦過傷、捻挫など)


 前記のように、ウィークポイントには必ず理由があり、その状態は日々刻々と変化するケース、あるいは膠着(こうちゃく)状態が続くケースもあります。そして、悪循環に陥ればより悪化します。一つ確かなことは、ウィークポイントが克服できないとバランスは直りません。ウィークポイントが極めて小さな部位であっても、身体全体に大きな影響が現れるのが人の身体なのです。




ウィークポイント第4の特徴

 「タイト・ルーズ・ウィーク」に加え、筋肉が伸びたり縮んだりする感覚を感じることができるかどうかも、ウィークポイントと判断する重要な目安になります。実は、筋感覚は、優先順位からすればタイト・ルーズ・ウィークよりも先にきてよい項目でもあります。

 なお、筋感覚を判断するには、次の3つのポイントがあります。

1.感覚が鈍い

 筋肉が「伸びる・縮む」といった感覚のフィードバックは、筋肉の状態を把握するうえでとても重要なことです。ウィークポイントの筋肉では、この「伸びる・縮む」感覚が鈍くなっている場合が大変多く見られます。

2.筋肉の伸びを感じられるかどうか

 ストレッチを行う時、正しい関節の角度で、「ジーン」「ビーン」と筋肉が引き伸ばされていく感じを意識できればOKです。しかし、筋肉が伸びていく感じを意識できないと問題です。「タイト」な筋肉で伸びを感じない場合は特に重大です。タイトで伸びを感じられない状態になっていると、ストレッチが適切にできるのかどうかを判断することさえ難しくなるからです。逆に、「ルーズ」になり過ぎている場合にも、伸ばしても伸ばしても感じられないことになります。弾力のある「よい状態」の筋肉では、伸びやすくそして伸びる感覚もよく感じられます。

3.筋肉の収縮を感じられるかどうか

 筋強化では、筋肉を縮める時に負荷をかけて行いますが、この時、「ギュ・ギュー」っと筋肉の縮む感じを意識できない場合があります。この場合、実際に筋力を発揮していても、筋肉が弱く不十分な場合が多いようです。

 トータル・バランス・コンディショニングでは、筋肉の縮む感じを意識できるかどうかを非常に重視しています。この感覚を敏感に意識できると筋強化のステップアップも容易になってきます。




ケガ、オーバーユース、廃用性萎縮・弛緩がウィークポイントの原因の場合

 突然のアクシデント(ケガ)がのちのちウィークポイントになってしまう場合があります。ケガで患部自体がもと通りに回復しない、患部に近い関節の動きが悪くなる、回復のためのギプス固定によって関節周囲筋群のすべての筋力が低下する、治療期間が長引く、手術によって患部周囲の筋群がダメージを受ける、といったこともウィークポイントの原因になります。

 なお、ウィークポイントを生じさせる慢性的なトラブルには主に次の2つがあります。

1.使いすぎ、過使用性拘縮(オーバーユース&タイト)

1)主働筋型オーバーユース:左右差が大きく、片側の主働筋自体がオーバーユースとなる

2)代償性オーバーユース:主働筋が働かないために協同筋などがオーバーユースになる

3)連動不完全型オーバーユース:動作で連動する筋群に働かない筋肉があり、うまく連動出来ず負担がかかる

4)過緊張性オーバーユース:姿勢や動作を作るために、過度の緊張を強いられた筋群に起こる、肩こりなど

5)選択的動員型オーバーユース:筋線維の中で、部分的・選択的に動員されて、かつオーバーユース状態の場合)


2.使わない、廃用性(ウィーク)

 1)廃用性萎縮:使わないことで、萎縮する(狭い関節可動域)。タイト&ウィーク。

 2)廃用性弛緩:使わないことで、弛緩する(広い関節可動域)。ルーズ&ウィーク。




ウィークポイント

現場での使われ方

「ウィークポイントは患部のみではなく、患部の近くや遠くにもある」

 例えば、アキレス腱炎との診断を受けた症例では、アキレス腱の付着する下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)に問題がある場合と、その下腿三頭筋に負担をかけるハムストリングスに問題がある場合とがあります。さらに、腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)との診断を受けた症例では、確かに腸脛靭帯の付着する大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)と言う小さな筋肉が硬く縮んでしまっていることが直接的原因なのですが、この大腿筋膜張筋が硬くなった原因として、中殿筋や腸腰筋に原因がある場合もあるのです。

 このように患部に直接的に影響を与える部分があり、その部分にさらに影響を与えている部分が他にあることはまれではありません。多くの場合、この間接的な、遠因となるウィークポイントを探し出すことが難しのです。特に、足関節周囲筋群にウィークポイントがある場合には、股関節や肩関節に影響を与えるような場合も非常に多く、トータル・バランス・コンディショニングではこのようなウィークポイントを見つけ出すために、いくつものチェックを行い、また関連する筋肉の連動性を体系化して影響を与えている筋群をチェックするのです。

例1)腸脛靭帯炎↓大腿筋膜張筋の拘縮↓中殿筋の弛緩↓後脛骨筋の弛緩

例2)腰痛↓大殿筋が弱い(直接的原因)↓外反母趾(間接的原因)

例3)鵞足炎(がそくえん)ほうこうきんがタイトで弱い(直接的原因)↓足関節が不安定




「ウィークポイントは一つではなくいくつもあり、改善には優先順位がある」

 ウィークポイントの尺度として、柔軟性と筋力のニつがあげられます。例えば、タイトなウィークポイントと、ルーズでウィークなウィークポイントの2つがあった場合、改善の優先順位でタイトなウィークポイントが先にくる場合です。

 手順としては、まずウィークポイントを探し出すために柔軟性と筋力のCMFチェックを行い、悪い順にリストを作成します。これに基づいて、最も時間と頻度を費やして取り組むべき課題の筋肉が明確になってきます。そのうえで、一箇所一箇所を丁寧に、確実に改善していくことが大切です。その過程では、優先順位で一番のウィークポイントが改善されると、ニ番目が一番に繰り上がります。これを繰り返しながら複数あるウィークポイント全体の克服を目指します。




「ウィークポイントがあると協同筋や拮抗筋、その他の筋への代償作用が生じる」

 ある筋肉がウィークポイントになると、必ずその周囲に影響を与えることになります。特に、関節の動きの主働筋がタイトなウィークポイントになると、拮抗筋はルーズになり、協同筋や補助筋には必然的に代償性の負担がかかる、という方程式があります。そして、この代償性の負担がオーバーユースを招き、第ニ、第三のウィークポイントになっていきます。

例1)中殿筋の弛緩↓大腿四頭筋の拘縮、腰方形筋(ようほうけいきん)の拘縮

例2)中殿筋の拘縮↓内転筋群の弛緩

例3)腸腰筋が弱い↓大腿筋膜張筋の拘縮

例4)内転筋群の拘縮↓中殿筋の弛緩


「重篤なウィークポイントの筋肉では、筋力強化や柔軟性の向上が非常に困難であり、主働筋として機能しない」

 ウィークポイントは、5年、10年と長年の癖などが蓄積してタイトになったりウィークになったりしています。10年以上も前から硬かった筋肉を柔らかくしようと思っても、一日や一週間では簡単には改善されません。三カ月、半年単位で経過をチェックしながら、じっくり取り組まなければ、なかなか効果が実感できるところまでは到達できません。


「ウィークポイントは、それぞれ改善期間が異なり、優先順位も時期によって変化する」

 動作に影響を与える深刻なウィークポイントであっても、改善方法が正確でエクササイズが着実に遂行されれば、一週間でも十分に改善され、スムーズに二番目、三番目へと移行できることもあります。しかし、中には一見三番目、四番目だった筋肉がかなりの改善期間を要するウィークポイントだったことに気付く場合もあります。


「ウィークポイントの筋肉は、機能の向上や定着が不安定で、気温や精神的緊張の影響を受けやすい」

 寒いと血行が悪くなり、筋肉の活動性も低下しますが、筋バランスの左右差がさらに拡大するということもあります。スポーツ選手では、十分なウォームアップが必要です。また、レース前に「あがる」「不安」といった精神的緊張が、筋肉の活動性を低下させることもあります。

 

ウィークポイント改善のシナリオ作り

 トータル・バランス・コンディショニングでは、ウィークポイントにどうアプローチしてくのか? が、重要なカギとなります。その際に欠かせないのが、ウィークポイントに優先順番つけ、改善へのシナリオを作成することです。これを「プライオリティー・シナリオ」と言います。

 まず、最悪のウィークポイントを特定し、これに影響を受ける部位、そこに影響を与える部位が、ニ番目、三番目の優先順位となります。これを整理してアプローチの手順(ルーティン)や課題を整理していきます。そして、動作改善のためには、これらいくつかのウィークポイントが連動する筋肉、影響を受ける部位などが、まとまって克服され全体としてレベルアップしなければなりません(後述)。ですから、トータル・バランス・コンディショニングはウィークポイントの克服を最優先の目的としています。



Total Balance Conditioning

official@jtbca.or.jp

080-6559-6690